泣く人だけが、傷ついているわけじゃない。
私は休職しているが、徐々に回復してきて、医者から復帰OKの診断をもらった。
次は会社による復帰判断のために人事との面談があるので、どんな事を聞かれるのか、どういう事を話せばいいのかを会社のカウンセラーと話し合った。
「なぜうつになったのか」や、「どうやって再発防止するのか」など聞かれるらしい。ふむふむ、そりゃそうだろうな、と冷静に聞いていた。
最後にカウンセラーから、「でも、うつになって休職した事をきっかけに色々な事と向き合ってきたから、この経験がこれからの糧となるといいですね。」というような事を言われた。
私は「そうであったらいいなと思います」と言いながら、不意にかけられたやさしい言葉が胸に沁み、少し泣いてしまった。
するとすかさず、カウンセラーが「あ、涙はね、面談の場で見せると、感情が安定していないと捉えられるおそれがあるので、脅すわけじゃないけど気をつけてくださいね。」と。
ハッとした。
悔しい時や悲しい時の涙は人前で見せるまいと思っていたけど、こういう緩んだ時に出てしまう涙も捉え方によってはネガティブなんだ、と。
この「涙は感情が安定していないサイン」という考え、すごく腑に落ちた。
私は、「休職して自分のことを、今まで以上に理解できた事は良かったし、これからに生きる。」と思う一方で、心のどこかで、一度休職してしまった自分のことを失敗作のように感じ、自分を肯定できていなかった。
挙げ句の果てに、「復帰後も、うつで休職した奴っていう目で見られるんだろうな、嫌だな。」と勝手に妄想を膨らませ、凹む次第だった。
だからこそ、やさしい言葉に対して、涙が出るほど心が動いてしまったのだ。
「そう言ってもらえて嬉しいです」、ホロリ。と。
でも、面談で求められているのは、そんな事じゃない。
「あなたは、自信を持って復帰できますか?ちゃんと回復していますか?当社で働けますか?」って事なのだ。
それに対し、「当然です」と答えられるくらいの自信があれば、きっと感情は大きく動かずに済むのだろう。
私は、そこまで心の整理がついていなかった事に気づいた。
今のままだと、(そんなコト言われたって、私だって不安なんです〜)と思いながら口先で「大丈夫です!」と答え、面談の百戦錬磨である人事に見破られるのがオチだろう。
まずは、休職した自分を認めるために、ネガティブに思っていることを書き出して、1つ1つ解釈し直していこうと思う。
そして改めて、どうやってうつを再発防止していくのか、考えていこうと思う。
そうすれば、すこしは自信が持てるんじゃないかな。
世の、泣かない人の強さ、というのは、
「そこについてはもう十分に、考えて考えて、考え尽くして、感情も何往復もして、自信つけたんで。」
という強さなのかもしれない。
その人に過去の傷があるからこそ、の強さなのかもしれない。
泣かない事が良い、ということではなくて、
泣く人も泣かない人も、傷はあるのかもしれないね、ということ。