うつで休職した話

体調と治療の記録

うつを引き起こす10の思考パターン

自分の考え方のクセが、うつの原因となったのではと思うようになった。

というのも、よく「真面目な人ほど鬱になりやすい」というフレーズを目にしたからだ。

鬱をカミングアウトしたタレントの高木美保さんも、自身のことを”前向き病だった”とか、”うつの状態に陥る人というのは、ある意味、生真面目で心配性”と語っていた。私もどちらかというと手を抜けない真面目タイプで、逆境でも弱音は吐かず頑張って進むタイプ。でも、それが良い事だと思っていたから、むしろ誇りに思い生きていた。

今思えば、その型にはまった真面目な思考が

 

 「課題はあるけど、こうすれば乗り越えられる」

 「こうするのがベストだから、やらなくちゃ」

 

という義務感を作っていた。それは仕事のみならず、家庭においても。

 

 「明日は雨だから今日のうちに全部洗濯しとかないと」

 「ご飯は手作りが添加物が少なくて良いから、毎日手作りしたい」

 

といった具合。これが思った通りにできないとイライラして仕方なかった。

さらに、自分の思っている事がベストで正論だと思い込んでいるから、その考えの通りに周りが動かないとイライラしていた。

 

 「上司だからと言って、部下をいくらでもコキおろしていい訳じゃない。言って

  いることが正しくても伝え方というものがあるだろう。その位のことも理解

  していないなんて、ロクな人じゃない」

 「あの人、相手によって対応を変えすぎ。良くない事だし、見ていてイラつく」

 「共働き夫婦なんだから、旦那だって洗濯物くらい上手に干して欲しい」

 

こーゆー話、よくお酒を飲みながら愚痴ったもんだ。よくある話だと思っていたし、そんなに深刻に考えているつもりもなかった。

でももしかしたら私は、この〜すべき理論を人一倍強く思い、ネガティブな感情を他の人が感じる何倍かの強さで真に受けていたのかもしれない。

このような自分の感覚を相手に押し付ける思考が新たなストレスを生み、自分を苦しめていったんだろう。そしてこの他にも無意識のうちに自分をうつに追いやった思考パターンがあるのではないか。

そういった思考のクセを変えない限り、今回うつ病から回復しても、将来再発してしまうのではないか。

将来に不安感が募った。

認知行動療法の施設に通おうとも思ったが、お金もかかるし、どこが良い施設なのかさっぱり分からなかった。

そこで出会ったのが、デビッド・d・バーンズの『いやな気分よ さようなら コンパクト版 自分で学ぶ「抑うつ」克服法』だ。うつ病のバイブルとも言われる名著のコンパクト版。

 

item.rakuten.co.jp

 

この本の冒頭で、ある読書療法の実験が紹介されていた(1990年前後)。

中程度のうつ病の人を2グループに分け、一方にはこの本を4週間以内に読んでもらい、もう一方には4週間後にこの本を読ませた。

すると、この本を4週間以内に読んだグループは4週間後にはうつ症状の著しい改善が見られ、ベックうつ病検査でも正常値だったという。もう一方のグループは4週間後でもうつ状態は横ばいだったが、この本を読んだ後には同様の改善が見られた。

*1

これは私にとって希望だった。

薬を使わなくても、認知行動療法を、それも読書を通して、うつ病を改善できるのだと。この本を基に、まず独自に認知行動療法をやってみることにした。

 

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私たちの感情は、目の前に起こる出来事を解釈した結果生まれる。出来事そのものに良い悪いは無い。私の場合、その解釈に、うつになりやすいクセがあるのだろう。

その認知のクセを、本書では”認知の歪み”として10個の思考パターンが定義されていた。*2

 

 

1. 全か無か思考

ものごとを白か黒のどちらかで考える思考法。少しでもミスがあれば、完全な失敗と考えてしまう。

 

2. 一般化のしすぎ

たった1つの良くない出来事があると、世の中全てこれだ、と考える。

 

3. 心のフィルター

たった1つの良くないことにこだわって、そればかりくよくよ考え、現実を見る目が暗くなってしまう。ちょうどたった1滴のインクがコップ全体の水を黒くしてしまうように。

 

4. マイナス化思考

なぜか良い出来事を無視してしまうので、日々の生活が全てマイナスのものになってしまう。

 

5. 結論の飛躍

根拠もないのに悲観的な結論を出してしまう。

 a. 心の読みすぎ:ある人があなたに悪く反応したと早合点してしまう

 b. 先読みの誤り:事態は確実に悪くなる、と決めつける

 

6. 拡大解釈(破滅化)と過小評価

自分の失敗を過大に考え、長所を過小評価する。逆に他人の成功を過大に評価し、他人の欠点を見逃す。双眼鏡のトリックとも言う

 

7. 感情的決めつけ

自分の憂鬱な感情は現実をリアルに反映している、と考える。「こう感じるんだから、それは本当のことだ」

 

8. すべき思考

何かをやろうとする時に「〜すべき」「〜すべきでない」と考える。あたかもそうしないと罰でも受けるかのように感じ、罪の意識をもちやすい。他人にこれを向けると、怒りや葛藤を感じる

 

9. レッテル貼り

極端な形の「一般化のしすぎ」である。ミスを犯した時に、どうミスを犯したかを考える代わりに自分にレッテルを貼ってしまう。「自分は落伍者だ」他人が自分の神経を逆なでした時には「あのろくでなし!」というふうに相手にレッテルを貼ってしまう。そのレッテルは感情的で偏見に満ちている

 

10. 個人化

何か良くないことが起こった時、自分に責任がないような場合にも自分のせいにしてしまう。

 

 

このような10種類の認知の歪みが、うつ病の多くの症状を引き起こしているという。

私の場合、日々の出来事の解釈においてこの認知の歪みが発動してしまっていないか?と考えていくだけでも、この歪みがいかに私の日常に浸透してしまっていたか痛感した。

 

 

*1:Scogin, F., Jamison, C., & Gochneaut, K. (1989). The comparative efficacy of cognitive and behavioral bibliotherapy for mildy and moderately depressed older adults. Jounal of Consulting and Clinical Psychology, 57, 403-407

Scogin, F., Hamblin, D., & Beutler, L. (1987). Biobliothrapy for depressed older adults:A self-help alternative. The Gerontologist, 27, 383-387

Scogin, F., Jamison, C., & Davis, N. (1990). A two-year follow-up of the effects of bibliotherapy for depressed older aduots. Journal of Consulting and Clinical Psychology, 58, 665-667

Jamison, C., & Scogin, F. (1995). Outcome of cognitive bibliotherapy with depressed adults. Journal of Consulting and Clinical Psychology, 63, 644-650

Smith, N. M., Floyd, M. R., Jamison, C., & Scogin, F. (1997). Three-year  follow-up of bibliotherapy for depression. Journal of Consulting and Clinical Psychology, 65(2), 324-327

*2:David D, Burns (2013) いやな気分よ、さようなら コンパクト版 xii-xiii, 35